キルン合同会社の代表を務め、福岡県福津市の弁当工場の受注・製造管理システムを開発している薄田常善(すすきだ つねよし)さんは、初めて入社した会社で営業職に就いたものの、仕事が合わず辞めるつもりで上司に相談。その後、上司の計らいにより子会社のコンピュータ会社へ転職し、数多くのシステムを開発するプログラマーとなった人物です。
「最初に入社した会社の上司から、「コンピュータやれ」と言われなければ、今この仕事は無かったと思います。」
新潟県で生まれ育ち、就職を機に関東へ移り住み、最初に入社したのは商品先物取引を取り扱う会社。営業職としてしばらく仕事していたものの、成績が出せなかったため、辞める覚悟で上司に相談したと薄田さんは話します。

しかし、上司の言葉は「子会社でコンピュータを扱っている会社があるから、そっちに行ってみろ」でした。以来、商品先物取引に関連するシステム開発に携わり、現在までプログラマーとして業務をこなしています。
元々福岡県に縁のなかった薄田さんですが、会社員時代の福岡出張時、取引先とのやり取りでトラブルを起こし、クレームになったと話します。当時の社長から「コミュニケーション能力を改善した方が良い」と言われ、福岡にあったスクールに通い始め、尊敬できる先生に出会いました。
「先生の話を聞いていくうちに、「言葉で何でも出来るんだ」と感じるようになりました。」
福岡での出張は半年で終わり関東に戻ったものの、将来はその先生と何かしてみたいと考え、脱サラ後は福岡に移住し、起業したいと考えるようになります。その先生から色々教えてもらってから、人間関係も円滑になり、薄田さんの人生も大きく変わったと話します

「取引所のシステム担当者が家庭の事情で長期休暇を取ることになり、また同時期にその部署の多くの方が、ほぼ私が全てを担当する形になりました。」
主にNASDAQのデータをCSV化し、データベースを作成して帳票を作成するような、取引所とホームトレードのデータをやり取りするシステムを開発していましたが、取引所側のシステム部署の社員が多く辞めるなどのハプニングが重なり、取引所のシステムを全て開発・運用保守する流れとなりました。 1人で取引所のシステムを任された薄田さんでしたが、取引所から「個人とは契約できない」と言われたことから、会社設立を決意し、2017年に「キルン合同会社」として法人化します。
「東日本大震災後、大きな溶解炉を使って瓦礫などを溶かして、建材を作るのに役立ち再建が進むドキュメンタリーを観て、瓦礫を建材に変えることが出来る窯(キルン)のような会社を作りたいと考え、この社名にしました。」
法人化した後は取引所との案件のほか、銀行のシステム開発案件もありましたが、2020年に発生した新型コロナウイルスの影響で抱えていた案件が全てストップし、仕事が入らない状況になりました。

「友人からフードデリバリーの仕事を勧められ、その時はそれで何とかしのぎました」

新型コロナウイルスによる不況の波を乗り越え、現在では福津市の弁当工場のシステムの開発・運用保守を行っている薄田さんですが、期せずして出会ったお客さんだと話します。
「先方は大きな案件として想定していなかったみたいですが、その会社のシステム担当者が辞めることのことで、「代わりに作ってください」と依頼され作ったら、成果物が評価され、他のシステムも依頼されるようになりました。」
現在は主に電話やFAXなどで届いた注文をシステムに入力し、データベースを作成した後、注文書、納品書や請求書などを発行する受注・製造管理システムの開発・運用保守を行っています。

会社員時代は大きな会社と仕事をしていたため、取引先のシステム部署でまとめられた意見をもとに各種対応ができましたが、現在はシステム部署がなく、様々な社員から質問が来たり、薄田さんが要望を伝えても対応が難しいことがあるなど、会社員時代にはなかった苦労があると話します。
「会社員時代に当然だったことが、簡単ではなかったと改めて感じました。今の苦労が当時なかったのは、お客さん側のシステム部署のサポートがあってこそ出来たことだと思いました。」
「仕事は『縁』があるからこそ、いただけるものだと思います」と話す薄田さんは、自身が提供したシステムによってお客さんの業務効率が良くなったり、収益が上がるのを見ると嬉しく感じ、今後もさまざまなシステムを提供していきたいと話します。

「仕事とは「儲けてるから幸せ」ではないと思います。作ったものをお客さんに見てもらい、使ってもらい、喜んでもらえるというのは何ものにも代え難いと感じています。収益ではなく、お客さんとの信頼や人間関係にもっと重きを置きたいです。」
現在、キルン合同会社は薄田さん1人の会社であるため、開発費の値引きや顧客の予算に合わせて提供できる利点があると話します。しかし、システム開発自体は大変で、1人では対応しきれない部分もあるため、将来的に人数を増やしたいとのことです。

「複数人だと完成したときの喜びも全然違いますし、5人居れば5社ほど対応出来るので、そのような夢を持っています。」
さらなる顧客拡大と開発チームの構築を目標にする薄田さんは、今後も出会う方々とのご縁や信頼を大切にし、役立つシステムを提供していきたいと話してくれました。
ファウンダーメンタリー(Foundermentary)は、様々な挑戦に立ち向かう人々の軌跡を発信しています。
事業変革や新規事業への取り組み、その背景にある想いのほか、決断に至るまでの迷いや困難との格闘など、挑戦者のリアルな声をドキュメンタリー映像として視聴者に届けます。作品を通して潜在顧客や求職者が企業や挑戦者をより深く知る機会を提供するとともに、起業・独立・事業承継を目指す方々に勇気と洞察を与える、「心を動かし、人とつながる」マルチメディアコンテンツを提供していきます。
© Creascene Productions and Foundermentary All rights reserved.
Please login or subscribe to continue.
No account? Register | Lost password
✖✖
Are you sure you want to cancel your subscription? You will lose your Premium access and stored playlists.
✖