福岡県古賀市でコワーキングスペース兼飲食店として営業しているCREATE SPACE MIRACO(クリエイトスペースミラコ)は、「古賀市をより元気にしたい」という魚谷千代子(うおたにちよこ)さんの思いから生まれた施設です。CREATE SPACE MIRACOを運営する一般社団法人こがみらいは、代表理事の魚谷さんを中心に、コワーキングスペースを活用した起業支援や異業種交流会、ワークショップなどのイベントを開催し、動画やパンフレット、ウェブサイトといった広告の制作も行っています。
古賀市で生まれ育った魚谷さんは、社会人時代に約30年以上保育士として働き、その後、古賀市役所に入所して事務の仕事に携わることになりました。市役所での業務は保育士時代とは全く異なり、法律を学ぶ必要があったりと大変なことも多かったものの、仕事を通じて多くの人に出会い、古賀市の現状や市民についてさまざまなことを学ぶことができたと魚谷さんは語ります。

「特に「何かやりたいな」と言っていた女性起業家の方々を見て、とてもキラキラしていると感じました。その際に「私も何かできないかな?」と心のなかで思っていました。」
さまざまな考えを持つ人たちに出会いながらも、市役所の中ではできることに限界があると感じていました。
「一人ひとり素晴らしい方々を繋げたいと思いました。市役所にいるとそれが出来なかったのですが、私が独立すればそれが出来ると考えました。」

市役所を退所し、商工会に入り「一緒に何かやらないか?」と誘われた魚谷さんは、市役所時代に培った人脈を活用したいと考え、女性や学生をはじめとした起業家を支援し、古賀市の未来を元気にするため「一般社団法人こがみらい」を2018年に設立しました。
「最初は軽い気持ちで立ち上げたのですが、法人というのは責任を伴うものだと、ひしひしと感じました。」
株式会社だと重いと感じていた魚谷さんは、理事の必要人数が3人であり、人々を支援したいという考えから一般社団法人を選択しましたが、理事を探すのには苦労したと語ります。

しばらくして無事に2人の理事を見つけ、本格的に法人として動き出すことができましたが、今後の経営については日々悩んでいたそうです。古賀市の成人式実行委員会のメンバーだった魚谷さんは、学生メンバーに「古賀ってどう思う?」と尋ね、学生からさまざまなアイデアをもらうことになります。
「学生たちは「古賀をより元気にしたい」、「駅中心に学生が集まれる場所が欲しい」と話してくれました。私は起業支援もしたいと考えたので、訪れる方が色々な事を考えて頂けるスペースを作りたかったので、会議室などもあるコワーキングスペースを作ることにしました。」

「CREATE SPACE MIRACO」は「クリエイティブな場所」と「未来の古賀」が由来となっており、「クリエイティブな場所で未来の古賀を作る」という思いで、学生と魚谷さんが決めた名称だそうです。
JR古賀駅の近くに建てたいと考えた魚谷さんは、学生や理事のメンバーとともに物件を探しました。2つほど候補が上がったものの、所有者との折り合いがつかず断念することになりました。

「スタッフよってこの物件が最後に見つかりました。元々、古賀市の企業である「くまや蒲鉾店」の物件で、私達の思いを一生懸命話したところ、「そういう理由であれば良いですよ」と言ってくださり、快く貸していただきました。」

「資金がすぐに集まると思っていたのですが、そう簡単にはいきませんではありませんでした。」
地元の工務店と学生が設計した施設のデザインも決まり、リフォームの段階に移り始めましたが、資金の問題があったため、クラウドファンディングを通して資金を募ることになりました。しかし、思うように資金は集まらず、魚谷さんは1ヶ月かけて知人や友人などさまざまな人に「MIRACOが賑わう拠点になる」と一人ひとりに熱心に話をしました。
その中で、若い女性が「このような施設を作ってほしいと思っていました」と共感の声を寄せ、多額の支援金を提供してくれたことで、完成に近づいたと魚谷さんは語ります。
「「本当に頑張ってください」と言われたことが勇気となり、クラウドファンディングが成就し、作ることができました。」

クラウドファンディングが達成しても資金が潤沢にあるわけではなかったため、外装は工務店に依頼し、内装やお店のロゴは学生とスタッフが手がけて完成させました。
「学生やスタッフの皆の力を使って、天井や床を剥がし、ドロドロになりながら掃除するなど、一人ひとりの思いを乗せて作れたと思います。」

会議室やコピー機などコワーキングスペースとしての環境が整っているものの、施設のランニングコストを賄うため、CREATE SPACE MIRACOではカフェとしても営業しています。
「当カフェでは、古賀では特産品の博多あまおうをスムージーにした商品、「たぴこ」とくまや蒲鉾店の魚のすり身を使ったハンバーガー、「SHRIMI(しゅりみ)バーガー」を販売しています。」
いちご農家と飲食業の経験があるスタッフの力を借り、数々の改良を重ねて作られた「たぴこ」は、こんにゃく由来の成分である「グルコマンナン」を混ぜることで、博多あまおうの自然な甘さを年間通して楽しむことができるそうです。

通常のハンバーグを使ったハンバーガーメニューのほか、ナポリタンやカレーなどのカフェメニューも提供しており、手ごねハンバーグバーガーは特に人気の商品だと魚谷さんは語ります。
また、MIRACOでは古賀市の放置竹林の問題を解決する「火曜日の竹林隊」に所属しており、竹林整備から生まれたメンマ「くまちく」を使った食品メニューの開発を現在進めているそうです。

「拠点が出来たことにより、本格的な交流会を提供できるようになりました。」
MIRACOでは異業種交流会をはじめ、英会話教室やAI教室といったワークショップなど、さまざまな出会いの場として活用されており、5年間で延べ1,000人ほどが古賀市内外から集まりました。
毎年12月に開催される古賀駅西口にイルミネーションを飾る「こがクリスマスマーケット」は、MIRACOで生まれたイベントです。また、「古賀市を面白い場所にしていこう」と考えるクリエイターたちが集まることで、「何かやってみたい」という人同士がつながり、新しいアイデアが生まれたり、MIRACOがあったからこそ実現したことだと魚谷さんは語ります。

「交流会と通して仕事が生まれたり、会社に就職するチャンスが出来たり。そのような縁をつくるため、「こがみらい」を立ち上げたきっかけでもあるので、楽しめる場所や学べる場所として、今後も提供していきたいです。」

「立ち上げた時に理事になっていただいた女性社長から、「資金がないとダメだよ」や「経営はそんな甘いものではないよ」とお話をいただき、本当にその時は甘く考えていたなと思いました。」
当初は「お金を稼ぐ」ために法人を立ち上げたのではなく、奉仕のためにと考えていた魚谷さんでしたが、ランニングコストが常にかかるだけでなく、他の人を支援するにも資金が必要であると強く感じたそうです。
「資金がある程度あれば、この人たちを支援できると改めて知ったので、今後は収益化しつつ色々な支援ができる団体になりたいです。」

飲食店や昼に営業しているお店の経営は大変だと感じていても、さまざまな人が出会い、育ち、飛び立っていく場所や、親子がゆっくり過ごせる場として、MIRACOを維持していきたいと語ります。
「5年後、10年後に営業形態が現在と異なっていたとしても、CREATE SPACE MIRACOとして、全体的な古賀市を見ながら、大きな視点で今後も色々な仲間を集め、古賀市をもっと楽しく面白い場所にしていきたいと皆と話しています。」
魚谷さんは、古賀市には個性的な人や面白い企業が多く、自身も「あの人に出会わなかったら、MIRACOはできていなかった」と語ります。

「皆と作り上げたMIRACOだから、私はお返しができる場所にしていきたいです。」
人とのつながりを大切にしたいと考えている魚谷さんは、今後も異業種交流会といったイベントを通して、「1人では実現が難しい」と感じている起業家たちがさまざまな人と出会い、新しい面白いことが生まれるような機会を提供していきたいと語ってくれました。
ファウンダーメンタリー(Foundermentary)は、様々な挑戦に立ち向かう人々の軌跡を発信しています。
事業変革や新規事業への取り組み、その背景にある想いのほか、決断に至るまでの迷いや困難との格闘など、挑戦者のリアルな声をドキュメンタリー映像として視聴者に届けます。作品を通して潜在顧客や求職者が企業や挑戦者をより深く知る機会を提供するとともに、起業・独立・事業承継を目指す方々に勇気と洞察を与える、「心を動かし、人とつながる」マルチメディアコンテンツを提供していきます。
© Creascene Productions and Foundermentary All rights reserved.
Please login or subscribe to continue.
No account? Register | Lost password
✖✖
Are you sure you want to cancel your subscription? You will lose your Premium access and stored playlists.
✖