日本の企業数のうち、中小零細企業の割合は99.7%と言われており、これらの企業は日本経済を支えているといっても過言ではありません。人手不足や資金繰りといったさまざまな問題により経営が苦しむ会社が多い中、林 幸一郎(はやし こういちろう)さんはこれらの問題を支援するため、福岡県や佐賀県の民間企業や公的機関を中心に経営コンサルティング事業を提供しています。
林中小企業診断士事務所の代表であり、よくする株式会社の代表取締役も務める林さんは、主に中小企業のクライアントに対し経営戦略を立て、経営計画書を作り、それを実行する支援をしています。公的機関では行政の経営相談窓口や商工会議所、中小企業支援機関での専門相談員として業務に従事し、経営改善や事業再生といった分野で経営計画書の作成や実行を行っています。
民間企業向けには、会社と顧問契約を交わし、毎月会社を訪問して経営会議への参加や経営者との面談を行い、経営に関するさまざまな相談を受け、それに基づく改善策を提案する業務を提供しています。
鹿児島県鹿児島市で生まれ育った林さんは、小中学生の頃に野球に励んでいましたが、選手になる機会がなく、「才能が無い」と感じたと語ります。
「中学生の頃、選手にもなれず、野球への才能が無いと感じることが出来たのが、逆にすごく良かったのかなと思ってます。その際に人には向いているもの、向いてないものがあるという事を知ることが出来ました。」

大学進学を機に福岡県へ移住し、大学卒業後は人材サービス業の会社に入社して営業職に従事しました。複数の企業が入るビルの最上階から順に、全ての階にある会社に飛び込み営業を数年行った後、社内で派遣社員や外部社員への人材教育を行う講師となります。
その際、フリーで活動している経営コンサルタントと出会う機会があり、「将来、自分もフリーのコンサルタントとして活動してみたい」と考えるようになります。
「当時の私には経営に関する知識が全く無かったので、何から勉強するかを考えた時に、様々な分野がある中で財務会計とITについて分かっていないと、経営コンサルティングが出来ないと思い、それらを学べる会社に転職しました。」
財務会計ソフトを提供する上場IT企業に転職した林さんですが、簿記やITの知識が浅かったため、営業にとても苦労したと語ります。
「議事録係として先輩の営業に付いて行っても、ITと会計用語が連発だったので、聞き取ることも議事録を記すことも出来なかったのを良く覚えています。」

その悔しい思いを糧に、林さんは寸暇を惜しんで土日を使い簿記専門学校やIT専門学校に通い、資格を取得するなどの努力を重ねた結果、徐々に売上を伸ばすようになったと語ります。
林さんの祖父は、幼い頃から税理事務所の丁稚奉公として生計を立てており、後に正式な任用試験を受けて税理士として採用され、国税局の局長を経て、自身の税理士事務所を立ち上げました。

幼少期に祖父の家によく遊びに行っていた林さんは、祖父がクライアントの経営相談に乗ったり、身の上話や会社の後継者が結婚する際にパートナーを紹介されるなど、仕事とプライベートの両面で頼りにされている姿を見て、憧れを抱いたと語ります。
「会社員のままだと、おじいちゃんのように自分が将来引退しても人が訪ね教えを請うたり、頼りにされることは無いと感じたので、個人で何か世の中に残したい、誰かの役に立ちたい・・そのためには何か行動に移さないと行けないと考え、独立することにしました。」

IT企業に10年ほど勤めていた林さんは、独立する前に今の会社で実績を残せば後々役立つだろうと考え、「全国営業成績1位」と中小企業診断士の資格を3年かけて取得し、退職後の2013年に「林中小企業診断士事務所」として独立します。
独立後は順調に軌道に乗ったものの、個人の範囲では抱えきれないほどクライアントが増え、新規の仕事を断る必要があり、その度にとても申し訳ない気持ちになったと林さんは語ります。

現在の取締役である野島さんに出会い、林さんが抱えきれなかった案件を任せたところ、それを契機に野島さんは経営コンサルタントとして独立しました。林さん自身、経営コンサルタントという仕事に救われて幸せになったと感じており、野島さんに仕事を提供し、独立を支援できたことも良かったと感じたそうです。
「野島さんのような方を輩出できるようにしたら、もっと活躍できる場が生まれ、我々の支援によって経営が良くなる会社を増やせるかもしれないと考えました。それを実現するには私の個人名の事務所ではなく、もっと大きなテーマでやるような会社の方が良いかなと話したら、野島さんに「その会社作ってください」と言われ、法人を作りました。」

能力や個性があっても、独立に踏み切れない人が多いと知った林さんは、そのような人たちと一緒に仕事をし、能力を発揮できる場を提供することで、大規模で多様な案件を受注できる体制を整えるため、法人化したと語ります。

「最終的なゴールとして、支援先の会社の状況や、経営者の生活、そして支援する我々の人生やキャリアを「よくする」ことを使命にするため、「よくする株式会社」という社名にしました」
よくする株式会社は、個人事務所の業務内容と大きくは変わりませんが、個人では対応しきれない大規模な案件への対応や、手の込んだ経営計画書の作成、プロモーションといったコンテンツの制作など、個人事務所よりも踏み込んだ支援を提供していると林さんは語ります。

「多くの中小零細企業は自社製品や事業への知識や熱意があるものの、一般的な型や原理原則はあまり知らないという事があり、ものすごく勿体ない判断をしてしまうことがあります。」
経営コンサルタントはクライアントにとってどのような存在でありたいかを考えた際、林さんは、軍隊の指揮権を持つ将軍に作戦の提案や情報提供を行う「参謀」でありたいと思ったそうです。

「経営者にとって良い情報と良い作戦を提供し、その会社が勝てるようにしていくのが、我々が「経営者の参謀」になることだと思っています。」
「経営者の参謀」は林中小企業診断士事務所とよくする株式会社の両方で使われているキャッチコピーであり、登録商標にもなっています。これを登録したことで、商標権に関する知識を深め、中小企業向けに知的財産権の提案ができるようになったと林さんは語ります。
「我々が「経営者の参謀」として、「このやり方が原理原則に則った方法ですよ」や「この方法であれば失敗する確率が高くなります」といった情報を提供することに、すごい意義があるのではないかと思います。」

赤字が続き、経営危機に陥っていた会社の支援に入った林さんは、支援後最初の決算で黒字化。その後、黒字が続き、無事に会社を立て直すことができました。
その会社の社長には息子がおり、受験に苦労しながらも東京の一流大学に合格したという話を聞きました。社長は林さんに「うちの息子は大学を卒業させられなかったかもしれない。今、息子が活躍できているのは、林さんと出会えたからだね」と話してくれたそうです。

「私の支援を通じて会社の決算が黒字化したことはわかっていましたが、社長の息子さんのことまでは思いが至りませんでした。息子さんの人生まで良くすることができたのかなと思うと、自分はこの『良い仕事』に巡り合えたと感じ、この仕事を大切にしていきたいと考えるようになりました。」

会社員時代と比べて、現在は人との付き合い方も変わったと感じる林さんは、さまざまな経営者と巡り合うのが楽しいと語ります。
「色々な思いでアイディアや熱意を持っている、多様で個性を持った方と出会うことが出来るので、そこがこの仕事の楽しさだと思います。」
中小企業診断士や経営コンサルタントとして活躍している方々は、前職の経験から会計やIT関連に強みを持つ人が多い中、独立前までずっと営業をしていた林さんは「自分には強みが無い」と感じていました。
しかし、支援先の会社で営業チラシを見せられ、キャッチコピーなどのアドバイスをしたところ、社長から「林さんはなぜ、そのようにすぐに思いつくのですか?」と聞かれました。林さんが会社員時代の営業経験や、上場IT企業で営業成績全国1位を達成した実績を話したところ、「それが林さんの一番の強みではないか?」と言われ、自分の強みを認識したそうです。

「差別化要素や強みは自分で考えても、結局のところお客さんや市場がそれを判断します。自分の強みを認識しつつ、お客さんからの評価やフィードバックを貰うということが、すごく大事だと学べた瞬間でした。」
中小企業診断士や経営コンサルタントという仕事は、支援先の業績が良くなったり、クライアントが満足したかどうかで次の仕事を頂けるかが決まるという、「相手の役に立ったか」がはっきりとわかる仕事だと林さんは語ります。
「「自分を高める」モチベーションが掛かる仕事です。毎日自分の成長を感じられるのが、この仕事の一番良いところだと思います。」

「人は人、俺は俺様」という座右の銘を持つ林さんは、自分より優秀な人や一生敵わない人が世の中にいる中で、他人と比べるのではなく、「自分自身によって過去最高であるか」、「自分史上最高になっているか」を常に目指しながら、今後も事業を提供していきたいと語ってくれました。

ファウンダーメンタリー(Foundermentary)は、様々な挑戦に立ち向かう人々の軌跡を発信しています。
事業変革や新規事業への取り組み、その背景にある想いのほか、決断に至るまでの迷いや困難との格闘など、挑戦者のリアルな声をドキュメンタリー映像として視聴者に届けます。作品を通して潜在顧客や求職者が企業や挑戦者をより深く知る機会を提供するとともに、起業・独立・事業承継を目指す方々に勇気と洞察を与える、「心を動かし、人とつながる」マルチメディアコンテンツを提供していきます。
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