あなたの手は、あなたを応援している。手相家・辰原奈緒さんの仕事と想い
手相鑑定と手相講座をおこなう辰原奈緒(たつはら なを)さんは、月に2回「甘味処 あべ」で対面鑑定を行い、ブログやオンラインショップを通じてメールでの鑑定も利用できます。
さまざまなキャリアを経て手相家として独立した辰原さんは、自身が人生の岐路に立ったときに手相と出会い、10年以上が経っていました。多くの人の手相を鑑定してきた辰原さんは、「手相は怖いものでも難解なものでもなく、『あなたの手があなた自身を応援している』ことを伝え、『自分の中にすでにあるものを、もう一度確かめることができる』時間を提供している」と話します。
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手相との出会い
岡山県で生まれ育った辰原さんは、高校卒業後、バスガイドとして働き始め、その後は美術館の売店での仕事など、さまざまな場所で経験を積みました。25歳で最初の結婚をしましたが、その数年後に離婚。再婚したい相手がいたものの、相手の家族に強く反対されていました。
「再婚したい人がいる、でも誰にも相談できない。じゃ、手相を見よう。当時はそう思って、本屋で手相の本を手に取りました」
悩みを解決したい一心で手相に出会った辰原さんでしたが、本を読むだけの独学では理解できず、その本の著者のもとへ鑑定を受けに行くことにしました。
「手相家はじっと私の手を見て、『間違いなく今付き合ってる人は運命の人。すんなりとは結婚できないけど、31歳の後半中頃に結婚できます』と言いました。すると、本当にその時期に相手のお母さんが許してくださり、再婚が叶いました」
再婚後、手相のことはすっかり忘れていた辰原さんでしたが、ふとしたきっかけで「再婚できる」と言ってくれた手相家が手相講座を始めることを知り、本格的に手相を学ぶため講座に通い始めました。その後、手相家として独立し、夫の転勤をきっかけに福岡県へと移住しました。
手のひらに刻まれているもの
辰原さんが手相の魅力として真っ先に挙げるのは、「思っている以上に情報が刻まれていること」です。
「手相には、現時点での過去と未来と現在が全部出ていると言われています。例えば、あなたが持って生まれた生命力は人より少し弱いとか、考え方はすごく現実的だということがわかると言われています」
過去に経験した辛い出来事は、まだ乗り越えられていないうちは濃い線として残り、自分の中でしっかり向き合い、消化できた時に線は薄くなっていくと辰原さんは説明します。
「私の場合、過去に離婚したことは変わらないけど、過去の出来事を咀嚼して全て乗り越えたから、離婚の線は薄くなっています。なんなら、『離婚したっけ?』と感じるくらい、今はその線が薄くなっています」
過去だけではなく、未来も見えるとされる手相は、将来どうしても叶えたい夢がある人には、その線がくっきりと浮かび上がるそうです。それは「その人が、その夢に向かっていく意志が出来上がっているから」と辰原さんは話します。
「逆に仕事に不安があったりと、将来を何も思い描けない時は、線が出てきません。つまり手相は運命を予告するものではなく、今この瞬間の気持ちが映し出されるもの。意志や気持ち次第で、手相の線は変化していくとされています」
占いには大きく分けて、生年月日などをもとに読む命術、タロットカードのように偶然に見えるものから読む卜術(ぼくじゅつ)、そして手相や人相のように体に表れているものを読む相術という3つの種類があります。この中で手相が特に得意とするのは、「今の自分のままで、このまま進んだらどうなるか」を読み取ることだそうです。
「今悩んでいる悩みが、選択肢が2つぐらいに絞られているのであれば、タロットカードのような卜術が向いています。でも突然悩みが出てきた、どうすればよいか迷っているという時には、『今の状態だとこのような未来になる』ということがわかるのが手相の特徴です」
よく誤解されるのが、生命線の長さについてです。「生命線が短い」と不安に思っているお客さんは多いのですが、補強線が出ていることが多いそうです。左手が先天的な素質、右手が後天的な努力と経験を表すため、左手の線が短くても右手の線が濃ければ補完されるので、必ずしも長生きできないわけではないと、辰原さんはお客さんに伝えているそうです。
書くこと、話を聞くことが好きだから、巡り会えた仕事
辰原さんは予約不要の「甘味処 あべ」や予約が必要な旅館「鬼王荘」で対面鑑定を行っていますが、遠方のお客さんでも手相鑑定を受けられるよう、オンラインショップ「手相Forest」ではメールでの鑑定も受け付けています。手の写真を送ってもらい、文章で丁寧に返信するスタイルで、東京・大阪・北海道など全国のお客さんが利用しています。
「オンラインショップに加えてブログもよく投稿しているので、ブログ経由で利用いただくお客さんもいらっしゃいます。私は顔も年齢もオープンにして発信しているため、同世代の女性がほとんどです」
お客さんの悩みとしては「仕事の悩み」が多いそうですが、それはきっかけで、話していくうちに家族のこと、夫婦のこと、恋愛の悩みにつながっていくことが多いと辰原さんは話します。
「手相鑑定を受けてくださる方もさまざまです。初めて手相を受ける方や、純粋に手相が気になっている方は10分程度で問題ないですが、さまざまな悩みがあるとどうしても長くなってしまうので、その場合は1時間の鑑定や、時間制限のないメール鑑定をおすすめしています」
10年以上多くの人の手相を見てきた辰原さんですが、口コミで紹介されてくるお客さんも増えてきており、鑑定後に「今までにも手相を見てもらったことがあるけど、初めて自分のことをよく理解できました」、「このような表現で伝えてもらうことはありませんでした」、「鑑定結果を何回も読み返しました」といった感想を多く受け取ると語ります。
世間話が得意ではないと辰原さんは笑いながら話します。昔から深い話でないと物足りない、表面的な付き合いは苦手であるため、一般的な仕事の場であれば苦労するところですが、手相鑑定という仕事は辰原さんの気質にぴったり重なりました。
「書くことが好きで、深い話を聞くことも好き。そしてお客さんからも喜んでいただけている。この職業にたどり着けたことが、本当に良かったと感じています」
手相鑑定の他にも、手相を学びたい人のために、12時間の手相講座をオンライン形式で提供しています。12時間の講座完了後に生徒の質問などに答えるフォロー講座の要望もあったことから、最近は試験的に実施しており、生徒からも好評だと辰原さんは話します。
「ありがたいことに生徒も増えてきていますが、『仕事にしたい』と考えている方もいるなか、私自身ビジネスの部分を教えるのが苦手というのが悩みです」
手相一本で食べていける人がいる中、辰原さんは商売ではなく「好き」で始めたので、生徒さんへのビジネス的なアドバイスには限界があると正直に話します。ただ同時に、辰原さんにはもう一つの思いがあります。「プロにならなくていい」という考えです。
「講座を受けたからといって、『プロを目指す』必要はないと伝えたいです。学ぶ欲求と、それを仕事にするということは、別でも良いと考えています」
手相を仕事にしたいと考える人もいれば、純粋に興味があって学ぶ人もいる。辰原さん自身がまさに後者でした。向いている人はすでに動いているし、なかなか一歩踏み出せない人には、その人なりの別の活かし方があるのかもしれない。そう思いながら、今日も生徒さんにアドバイスしていると話します。
手相は、一つの選択肢として
悩みを抱えた時、占いという選択肢を「胡散臭い」からと除外している人は多いと辰原さんは認識しています。ただ手相には、数多くある線の1本の意味を知るだけで、毎朝顔を洗うたびに、お風呂に入るたびにその言葉を思い出し、自分を勇気づけることができるという面白さもあると話します。
「手相は絶対に自分のことを批判しません。全肯定で、『あなたに夢があるなら常に応援します、後押しします』ということを伝えているのです。手相とは『あなたの手があなたを応援している』メッセージでもあるのです」
「飽きっぽい性格」として相談を受けた時に、辰原さんはこう伝えます。
「執着がなくて切り替えが早いから、あなたはいろんなことを人の何倍も経験し、楽しめる。そのために生まれてきているんです。無理やり1つのことを長く続けようとしたら、その良さがなくなってしまうので、ありのままでいてください」
自分がマイナスだと感じている部分も、視点を変えればその人だけの強みになる。辰原さんはそう信じています。どんな面がある人であっても、手を見るとただ輝いて見える。そう話す背景には、辰原さん自身が離婚という経験をくぐり抜け、長い時間をかけて向き合ってきた過去があります。
どんな話を聞いても暗い気持ちにはならない、その過程があってこそ次がある・・・。その実感が、鑑定の言葉の奥に静かに宿っています。手相は、答えを渡す場ではありません。自分の中にすでにあるものを、もう一度確かめるための時間です。辰原さんが届けたいのは、その手がかりなのです。